実践リスク・マネジメント

リスク・マネジメントは2009年11月、国際標準(ISO31000)となりました。

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武井 勲の一言

中小企業のためのわかりやすいリスク・マネジメント入門―競争力と信用力の経営戦略 第2回

(2012年1月 1日公開)

 

1.リスク・テーキングが利潤の源泉
 高度成長時代、舶来モノは人気があった。
「洋酒と名がつけばなんぼでも売れた」と言った元サントリー会長佐治敬三は、昭和9年に一度撤退したビール業界への再進出を決断、同社は苦節40年を経て、2004年に初めて黒字となった。ハイ・リスクを覚悟してのリスク・テーキングであった。
 しかし、その裏には、「ぬるま湯に浸かって努力しないでいると、買い社はやがて傾く」という「茹で蛙リスク」を回避するリスク・マネジメント戦略と、「ビール業界の寡占体制をいつか我々が打ち破る」という価値創造のためのハイ・リスクを覚悟してのリスク・テーキングという決心・断行があったといえよう。
 ダイヤモンド・オンライン(11月15日)は「花王のリスク・テーキングという決心・断行があったといえよう。中国事業、苦節19年目で黒字化へ・奏功したマーケティング戦略の転換」を伝えた。
 要旨は日用品・化粧品メーカーの花王が、1993年に進出して19年目を迎え、長年手を焼いてきた中国事業について来年度にも黒字化できる見通しとなった、ようやく成果が出てきたというもの。いったい何が変わったのか。
 「昨年9月に販売した衣料用洗剤の『アタック瞬清』が中国市場に受け入れられた。特に上海地域では衣料用洗剤分野で10%のシェアをクリアできた」という。記事によれば、洗濯後のすすぎが1回ですむ『アタック瞬清』は水不足の地域が多く、節水ニーズに対応した商品であり、洗濯機が普及していない中国ではまだ手洗いの家庭が多く、すすぎの回数が少なくてすむことのメリットを実感しやすいのだという。
 苦節40年と19年、ややもすれば短期的視野に矮小化されがちなビジネス環境のなか、長期的なビジョン、経営理念及び戦略に基づいたリスク・マネジメントとリスク・テーキングをしなければならない。
 
2.チャレンジ精神
 「中小企業の見地から展望する日本経済ビジョン」(中同協・中小企業憲章・条例推進本部、2011年6月5日)は、大震災復興を日本経済の新たな発展へ向けることを提言している。まず、中小企業憲章草案から展望する日本経済の発展方向として6つのビジョンを示し、次にビジョン実現に必要な政策の考え方、財政と投資の流れを内需拡大型にする戦略を提起している。
 さて、パイオニアの創設者松本望は、昭和3年(1928年)にラジオ商で大当たりしたが、翌年の世界大恐慌でその日暮らしに転落した。
このころ音響機器に興味を持った松本は、昭和25年に「パイオニア」の開発・販売を開始した。周囲はみな「無理だ」「無謀だ」と反対したが、あえてチャレンジしパイオニアを築き挙げた。「社員の中には知恵がある人間がたくさんいる。そういう人たちから自由さ、創造の喜びを奪ってはいけない。無鉄砲なくらいのチャレンジをさせなくては企業の若さは保てない。」
名経営者のことばは、日本経済の発展方向にチャレンジするビジョン、経営理念、及び経営戦略の示唆に富んでいる。

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