実践リスク・マネジメント

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武井 勲の一言

タカタの経営破綻はリスク・マネジメントの敗北か?

(2017年7月 4日公開)

 タカタが2017年6月26日経営破綻したと報道された。3年前にタカタのエアバッグのリコール問題が報じられてから、同社のレジリエンシ―に期待をかけながら、注目してきた。リスク・マネジメントと危機管理で苦境を好転させ、突破してほしかった残念である。

 限られた情報の中で、分析も的確な問題を指摘することもできないが、本件について、経営者とリスク・マネジメントの関係を整理してみることは、教訓の整理と再発防止の観点から、有意義であると思う。

タカタの取締役会は、

 エアバッグのリコール問題のリスクの把握を間違えていなかったか?すなわち、このリスクの衝撃(影響)の特定と評価ができなかったのではないか?

 間違ったセキュリティの感覚で業務運営をしていなかったか?

 取締役会のメンバーたちは、リスクの特定、評価、対処戦略、監視(モニタリング)、レビューというリスク・マネジメントのフレームワーク又は基礎知識を持っていなかったのではないか?

 エアバッグのリコール問題が報じられ1990年代はまだしも、6人目の死亡者がアメリカで報じられた2009年ころ、全社的リスク・マネジメント(ERMが、すでに、日米では取締役会の取り組むべき重要課題になっていたことに気づいていなかったのだろうか?

 タカタには、ERMの全社レベルの浸透が不十分であったか、それとも、まったく存在していなかったか?

 全社員をはじめ、納入先の自動車メーカー、デイーラーなどと「エアバッグのリコール問題への対処、言い換えれば、安全・安心問題を率直にディスカッションする仕組みはなかったのだろうか?

 もし、タカタの中で、ERMに取り組みが始まっていたならば?

 もし、リスク・マネジメントと危機管理の認識と行動不足が改善し始めていたならば?

 もし、ERMの潜在的な便益とコストが周知されていたならば?

 もし、全社的にリスク・マネジメントと危機管理のアプローチのしかたが研修・訓練されていたならば?

 に、もし、あらゆるレベルでリコール・リスクについて自由闊達にディスカッションする文化(社風)を築けていたならば?

 経営破綻は避けられなかっただろうか?

 後付けの講評や後追い講釈は空しいようであるが、リスク・マネジメントと危機管理においては、教訓の整理と再発防止に直結するので、実は、このような質問を丁寧に調査してみることは、かなり有意義なことであると、私は考える

 今回は、タカタの例で考えてみた。その結果、リスクがこれほど大きな衝撃(影響)を与えることから、全ての経営者の資質の重要性が改めて認識される。

 ERMは、CEO(最高経営責任者)一人の責任ではない。取締役会全体の責任である。このことを真剣に考えてみると、取締役会の構成メンバーに、適材を得ることこそ、コーポレート・ガバナンスの目指すところであることがわかる。

 タカタの経営破綻の教訓の第一番目は、「リスク・マネジメントと危機管理が、トップ・マネジメントの最重要課題のひとつになっていること」である。従来のリスク・マネジメントと危機管理のやり方、仕組み、リスク・マネジャーやチーフ・リスク・オフィサー(CRO)の役割を考え直す時期に来ているのではないだろうか。

 タカタの経営破綻は、あらゆる企業にガバナンスとリスク・マネジメントの関係を具体的契機にしなければならないと考える。

 取締役会が、そしてその構成メンバーである取締役一人一人が、「リスクを理解し、監視(モニタリング)し、そしてより効果的にリスクをマネジメントするために、何を、どのようになすべきか?」を、引き続き考察したい。(続く2017年6月29日)

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